砂漠の夜の幻想奇談



(…でも、私がやらなきゃ)


失敗した時のことを考えると恐ろしいが、ここで投げ出したらそれこそ彼らは一生ガチョウのままなのだ。

サフィーアは本当に覚悟を決めた。


「できる。できるわ」

ダハナシュに微笑んでみせてから、兄達の顔をぐるっと見回す。

「必ずやり遂げてみせますから」

迷いのない眼差しが強くて美しい。

皆、そう感じた。


「姫…」

横にいた心配性のカシェルダが溜息を漏らす。

「大丈夫よ、カシェルダ。……でも…もし危ない時があったら叱ってね。お願い」

「はい。かしこまりました」

彼が素直に返事をした時だった。

ダハナシュが窓辺に立って言った。

「ふう…話がまとまった所で、姫よ。そろそろ帰らなければ」

「あ、そうよね」

もうすっかり日が暮れている。

「ではまた、俺に口づけをくれるかな?」