これを合図に子分達が一斉に襲い掛かる。
「殺った!」お頭はそう思った。
しかし――。
「ぎゃあ!!!!」
「ぐああっ!!!」
情けない悲鳴を上げて切り刻まれたのは仲間の方だった。
バタバタと床に倒れていく彼らを呆然と見つめながら青くなる。
自分も殺される。
そう直感で感じ取った彼は少女を放り出して逃げ出した。
(きゃっ!?)
「おっと、俺のお姫様に乱暴はやめてくれ」
投げ出された少女を抱き留める。
(あ……あぁ……!)
少女は小刻みに震えながら青年を見つめた。
(あな、た……貴方は…!)
頭で理解するよりも先に心が彼の名前を叫んだ。
(シャール…!!)
サフィーアをしっかり抱きしめたまま、シャールカーンは一目散に玄関へ走る男の後を追った。
「待ちなよ」
瞬間移動でもしたのだろうか。
必死に走っていた男は、前方に現れた敵を見て泡を食う。
「なっ!?てめぇ、さっきまで後ろに…!」
ありえない速さ。
人間技ではない。
ここで男は思い出した。
「ぼ、亡霊…!?」



