砂漠の夜の幻想奇談



 少女も盗賊もいなくなった後、一人になったダハナシュは笑いながらムクリと起き上がった。

「ククク…本当に愉快だな」

背中も口元も血に濡れているが、痛みなど微塵も感じさせない様子で真っ直ぐ立つ。

「剣で刺されたくらいじゃ魔神は死なんというのに」

さて、楽しんだところでお姫様を助けに行こうか。

そう考えてから、ふと気がついた。

「ほう……感づいたか」

ラクダが去った方向を眺め、ニヤリと笑う。

「ならば姫の奪還は王子に任そうか」


嗚呼、今宵はなんと美しい月夜なのだろう。

再会には持って来いのシチュエーションではないか。


「クク……ククク…」

ダハナシュの低い笑いはいつまでも砂漠に響き渡っていた。