砂漠の夜の幻想奇談


しばらくの沈黙。

皆の視線がサフィーアに集まる。

「…できるか?」

恐る恐る口を開いたのは長男のニコラオスだった。

不安と期待が入り混じる瞳でサフィーアを見つめてくる。

そんな兄に彼女は「はい」と即答できなかった。

質問には答えずに、ダハナシュに問い掛ける。

「も、もし…私が…一回でも声を出したら…兄上達はどうなるの?」

姫の震える美声に機嫌を良くしながら、魔神は平然と言ってのけた。


「二度と人間には戻れなくなるな」


まるで「それだけのことだ」とでも言うような軽い調子で残酷な真実を教える。


「どうだ、姫。できるのか?」

先程のニコラオスの言葉を繰り返すダハナシュに、サフィーアは怯んだ。


(何年かかるか、わからないのに…)


その間、ずっと口がきけない。

一度でもうっかり声を出したらアウト。

兄達は一生ガチョウのまま。