砂漠の夜の幻想奇談


遠くの方にラクダが見える。

どんどんこちらに近づいてるようだ。

「あれは……チッ、面倒な連中に目をつけられたな」

「え?」

舌打ちの意味がわからずダハナシュを見上げていると、いつの間にか数頭のラクダに周りを囲まれていた。

「お頭!上玉ですよ!」

「ああ、こいつぁいい!高値で売れそうだぜ」

ラクダの乗り手が何やら物騒な会話をしている。

少女はやっと気づいた。


(盗賊…!?)


盗み、殺し、人さらい、何でもござれの質が悪い連中だ。

「よし!捕まえるぞ!野郎は殺せっ」

月明かりに反射してギラリと輝く三日月刀。

ラクダから素早く降りて来た彼らは、悍ましいその白刃をダハナシュに向けた。

「や、やめて!!嫌ぁあっ!!」

少女が叫ぶも、時既に遅し。

ダハナシュの背中には深々と刃が突き立てられた。

「ぐっ…あ……」

少女を抱きしめたまま、ガクリと膝をつくダハナシュ。

口からは血が垂れている。

「嫌よ!!そんなぁ!!ダハナシュ!!!」

「てめぇはこっちだ!オラ!来いよ!」

ダハナシュと引き離された少女は布で口を塞がれ、両手を縛られた。

そして無理矢理ラクダに乗せられると、そのまま連れ去られてしまった。

血まみれのダハナシュを残して。