砂漠の夜の幻想奇談


凄まじい絶叫に、屋敷の者が気づいたようだ。

バタバタと駆けて来る足音がしたかと思うと、ドニヤを筆頭にトルカシュや警備兵、バルマキーもやって来た。

「太守様!?いかがなさいましたか!?」

「何者だ!!太守様から離れろ!!」

兵達がシャールカーンからマイムーナを引き離そうとする。

しかし魔神はシャールカーンを抱え、素早く宙に浮き難を逃れた。

「王子よ……嗚呼、美しい王子よ!喜べ。お前を我らと同種にしてやったぞ」

「な………にっ…!」

心臓から全身に酷い痛みが走る。

痛みに意識が集中し過ぎて、マイムーナの言葉を拾うのが辛い。

「魔神にしてやったのだ。これで歳を取らぬ身体となったぞ。お前の美は永遠だ」

やっと心臓から手が引き抜かれる。

見た目はなんら変化がないが、シャールカーンは自分が人間ではなくなったことを実感した。

マイムーナが手を放した瞬間、自身の身体が宙に浮いたのだ。