砂漠の夜の幻想奇談



「俺の、全てを」


決意を秘めた眼差しで。


「俺の全てを差し出そう」


凛々しい表情で彼は言う。

娘のためならば、己の全てを賭けても惜しくない。

シャールカーンの覚悟にマイムーナは大きく頷いた。

「良かろう、美の王子よ。お前の全てを頂こうではないか」

笑みを深め、シャムスに手を伸ばす。

「ではまず、お前の願いを叶えようぞ」

マイムーナの手がシャムスの額に触れた。

途端、シャムスの身体が輝き始める。

先程のサフィーアと状況が似ていたためシャールカーンはひやりとしたが、結果は全く正反対だった。


「ん………しゃ…ぅ…」

「シャムス!?」

輝きが収まるとシャムスの瞳が開かれた。

「しゃ、るー」

丸い目をパチクリさせながら父親を見上げる。

「シャムス!!良かった!シャムスエンナハール…!」

胸に安堵感が広がった。

娘をしっかり抱きしめ、小さな温もりを確かめる。