砂漠の夜の幻想奇談



 一夜明けた翌日の朝。

十二人の兄達は早々にダマスを発つこととなった。

早く父と母に元気な姿を見せたいらしい。

「母上のこと、許してあげてね」

心配げな様子のサフィーアに、次男のディノスが綺麗な微笑みを送る。

「大丈夫ですよ」

「笑って許してやるさ」

「そうそう!」

ニシシと笑う双子のアドニスとマリノス。

そんな彼らの隣では、以前サフィーアに刃を向けたソティリオが複雑な表情をしていた。

「…色々思うことはあるがな」


許せるかはわからない。

だが、もう殺意はないようだ。

初めて会った時よりもソティリオは落ち着いて見えた。


「お元気で!兄上!」

ダマスの街から出る兄達の後ろ姿に、大きく手を振る。


きっと大丈夫。

母親との和解を信じて、サフィーアは彼らを見送った。