砂漠の夜の幻想奇談



 この二年間、喜ばしいことが色々あった。

バグダードにおいては、新王ダウールマカーンの統治が順調なこと。

そしてノーズハトゥザマーンの出産。

彼女の子供は王子で、リズワーンと名付けられた。

王位継承権第一位の御子誕生にゾバイダ王太后はすっかり満足したようだ。

彼女が不穏な動きを見せなくなったことが一番の喜ばしいことかもしれない。


「シャムス姫様も生まれたし、ファリザード姫も順調。ハァ~、次は俺に春が来ないかなー」

なんて嘆いているのは、未だ独り身のトルカシュだ。

「どうしたトルカシュ。溜息なんかついて」

「ああ~……太守様には一生わからない悩みですよ」

砂漠の暑さに苛立ちながら、ちょっぴり上司に八つ当たり。

今彼らは昨日の約束通りサフィーアを伴って十二人の兄達がいる砂漠を目指している。