砂漠の夜の幻想奇談



 翌日の早朝、まだ日が昇り始める前にカシェルダは旅支度を終え、出発しようと外に出た。

自身が乗ってきた馬を厩から出し、跨がろうとしたその時。

「おい」

後ろから声が掛かった。

「ルカス…」

振り返れば、カムルトスの実子ルカスの姿が。

「テメー、いなくなるんだってな」

「ああ」

「もう戻らねーらしいな」

「…ああ」

まぶたを閉じて重々しく頷けば、何を思ったのか荒っぽいルカスが剣を抜いた。

不意打ちだったが流石カシェルダ。

自身も腰の得物を抜き、素早い反応を見せる。

ガキンッと刃がぶつかった。

早朝の街路に物騒な音が響く。

「どこに行くんだか知らねーが、オレが殺すまで死ぬんじゃねーぞ!」

このセリフからカシェルダは察した。

これはルカスなりの見送りなのだ。

「フッ…」

受け止めたルカスの剣を薙ぎ払って不敵に微笑む。


「もちろんだ」


太陽の輝きがカシェルダの顔を照らす。

水平線の向こうに朝日が見えた。