「そんなことはありません。王の命令一つで証拠などなくても死刑には処せます。しかし、人一人の命の問題です。軽々しく扱えません。ですから…」
口調がハッキリしたものに変わる。
シャールカーンは真っ直ぐ兄の瞳を見据えた。
「兄上に宣誓していただきたいのです。俺の前で」
ダリラを死刑に処す代わりにシャールカーンが求めたものは、神への誓いだった。
「俺は兄上を信じています。なのでその宣誓を証拠として、ダリラの死刑を執行します」
真剣な弟の表情に偽りは見出だせられない。
自分が宣誓をしたならば必ず事を実行させるだろう。
カシェルダは肩の力を抜くように目を閉じた。
兄もまた、弟を信じている。
「誓おう」
額の傷痕を手で押さえながら歌うような宣誓。
「偉大なる我らの神アッラーにかけて、十二年前に俺を殺そうとした犯人は他ならぬ“災厄の母”ダリラだ。それを今ここでハッキリと誓う。俺は彼女の罪を知っている」
短い誓いを言い終わってからカシェルダは目を開けた。
「これでいいか?」
「はい、ありがとうございます」
神にかけての誓いは重い鎖となる。
虚言は罪になるため、もし嘘をついていたら宣誓などできないのが普通だ。
カシェルダは自分が正しいと誓うことでシャールカーンに証明すると、無言で回廊を歩き出した。



