こんな事態になるなど知らされていない。
何と答えればいいのか。
助けを求めるように見つめるも、彼の叔母はこちらを見向きもせずにツンとそっぽを向いている。
――見捨てられた
脳内に浮かんだ考えにゴクリと生唾を呑み込む。
その間もシャールカーンは報告書を手に話し続けていた。
「王宮から出たダウール兄上はバグダードで奴隷商人に捕まり、奴隷として売られた。最初の方の報告書にはそうある。奴隷商人の名はサバー」
名前が出た時、一人の中年男性が広間の中央へ進み出た。
「私がサバーでございます。王様」
急なサバーの登場に大臣達や列席者は息を呑み、謁見の間がざわめき出す。
「証人として呼んでおいたんだ」
シャールカーンは落ち着いた声で周りを静めてからサバーに向き直った。
「サバー。十二年前、第一王子を奴隷として売ったとは本当か?」



