砂漠の夜の幻想奇談


成り行きでサフィーアがついていくのと一緒に、カシェルダとダハナシュも歩き出す。



 少しして、突然ガチョウ達の歩みが止まった。

「あら?どうしたのかしら?」


その時、大量の砂が舞った。

「きゃあ!?」

「くっ!姫!」

強風が吹きつける。

視界を砂塵が覆い、目をつぶらざるを得ない。

カシェルダはとっさにサフィーアの顔を庇うように抱きしめた。



「ガー!ガー!」

風がおさまった時、ガチョウが鳴いた。

閉ざしていたまぶたを上げてみる。

すると、目の前に背の高い石造りの塔が現れた。


「え?いつの間に!?」


今まで見渡す限り砂漠で、建物などなかった。

サフィーアとカシェルダが呆然としていると、ガチョウ達が塔の中に駆けて行ってしまった。

「あ、待って!」

「姫!走っては危ないです!」

慌てて走り出すサフィーアの後をカシェルダが追う。

ダハナシュはニヤニヤしながら二人について行った。