砂漠の夜の幻想奇談


「上手く化けているが、こいつらは人間だな」

「え!?人間!?」

サフィーアは声を上げ、カシェルダは目を丸くした。

どう見たって十二羽の白いガチョウだ。

「ああ。十二人の男だ。もしかしなくても、こいつらが姫の探し人達ではないか?」

「まさか、このガチョウ達が王子達だとでも…?」

いぶかしむカシェルダの隣で、サフィーアはじっとガチョウ達を見つめた。


(これが…兄上達…?)


「ガー」

つぶらな二十四の瞳にサフィーアが映る。


「あ、兄上…?」


小声で呼んでみた。

すると、一番先頭にいたガチョウがピクリと反応した。

「ガーガー!ガーガー!!」

「え?何!?」

いきなりガチョウ達がサフィーアの周りを取り囲み、「ついて来い」という具合に歩き出した。