砂漠の夜の幻想奇談


「ま、待ってくれ、カシェルダ!どこへ行くんだ!?」

背中に呼び掛ければ護衛官はピタリと歩みを止めた。


「ダマスへ行ってくる」


「ダマスに…?」


皆が首を傾げると、カシェルダは振り返ってニヤリと笑った。

「あの男、バキータの餌に丁度良さそうだからな。連れて来る」

何やら恐ろしいことを言っているが、シャールカーンはカシェルダの真の狙いに気づいた。

「そうか!バキータで試すんだな!」

ダウールマカーンにしか懐かなかった凶暴なホワイトタイガーのバキータ。

接触させてどんな反応をするか見てやろうという訳だ。

「そっか。バキータに喰われそうになったら偽者ってことか」

納得するトルカシュ。

その独り言を聞いたバルマキーは改まった調子でシャールカーンに進言した。

「王様。王位を譲るか譲らないかの前にダウールマカーン王子が本物かどうかハッキリさせた方がよろしいかと思います」