砂漠の夜の幻想奇談


「兄上の御名を騙り侮辱するなど赦さない!!」

怒りのままにシャールカーンが腰の剣を抜こうとした瞬間だった。


「お待ちなさい!!!」


響いた声は三日月刀の切っ先よりも鋭いものだった。

「この子は紛れも無く我が息子、ダウールマカーン」


タイミングを見計らっていたのか、広間の隅から堂々とした態度で現れる。


「無礼は許しません」


ピリピリとした雰囲気を纏うブドゥール王太后は、ダウールマカーンを庇うようにして前へ出た。

王太后の登場に少し冷静さを取り戻したシャールカーン。

剣の柄から手を離し、腕を組む。

「どういうことですか?王太后は自分の息子が十二年もの間、ずっとバスラにいたのを知っていたと?」

「いいえ。知っていたらとっくに王宮へ呼び戻していたであろう」