砂漠の夜の幻想奇談


「匿っていた?なにゆえだ?」

「それは……」

アフマードが甥にあたるダウールマカーンを横目で見遣る。

すると、少し垂れ目の兄王子は踏ん反り返るような姿勢でシャールカーンを見つめた。

「忘れたのか、シャール。私は十二年前のあの日、お前に殺されそうになった。だから王宮を離れて伯父のいるバスラに逃れたんだ」

「なっ!?」

この発言を聞いてシャールカーンは驚きのあまり玉座から立ち上がった。

隣に座っていたサフィーアや、入口付近で聞き耳を立てていたカンマカーン達も仰天する。


「何を馬鹿なっ!?俺がダウール兄上を殺そうとした!?」


身に覚えがない。

今のは虚言だ。

「俺はそんなことしていない!!貴様、ダウール兄上ではないなっ!」

ダウールマカーンは嘘を言って他人を貶めるような人間ではなかった。

兄はとても優しくて、強くて――自分の憧れだったのだ。