砂漠の夜の幻想奇談


「どういう意味だ?」

ルステムが問えば、カシェルダは鼻で笑った。

「言葉通りの意味だ。ほら、出て来たぞ」

皆が一斉に謁見の間に注目する。

見れば、ダウールマカーンの隣には、黒い口ヒゲをタップリと蓄えた中年男性が立っていた。


「おお、幸多き王様。お久しぶりでございますな。貴方様の上に平安がありますように」

「貴方は確か……ブドゥール王太后の…」

「はい。私はブドゥールの兄、アフマードでございます」


ダウールマカーンの母、ブドゥール王太后。

彼女の兄であるアフマードはバスラという町の太守で、かなり有力な貴族だ。

シャールカーンも度々会ったことがあった。


「それで?なぜアフマード殿がここに?」

「はい…実を申しますと、王様。十二年前に行方不明となったダウールマカーン王子を今までずっと匿っていたのは、この私なのです」