砂漠の夜の幻想奇談


「姫の犬よ。そう、怒るな」

ダハナシュが二人の後ろからぬっと現れた。

「元凶は黙っていろ」

鋭い口調と眼差しで威嚇するカシェルダ。

この調子では話が先に進まないとみて、サフィーアが彼らの間に入った。

「ダハナシュ、兄上達は砂漠のどこにいるのかしら?」

見回しても砂の景色ばかりで人の気配は全くない。

「すまないが、そこまではわからない」

「ふざけるな魔神。砂漠は広い。端から端まで姫を歩かせて探させるつもりか?」

刺々しい護衛官の声にもダハナシュは余裕そうな笑みを浮かべた。

「姫にそんなご足労はさせないさ。俺が運んでやる。駄犬は走ってついてくるんだな」

「貴様…!」

「落ち着いてカシェルダ!」

その時だった。