砂漠の夜の幻想奇談


「ファ、ファルーズ兄上ぇええ!!!!!!」

大切な弟を背に庇って、マルザワーンの刃を受けたファルーズ。

咄嗟の行動だった。

だが、後悔はない。


声も出せぬまま、ファルーズは冷たい床に倒れた。

「兄上!!」

「王様!!」


ルームザーンとマリアムが崩れた彼を抱き起こそうと駆け寄る。

その間、シャールカーンは周りの部下に叫んでいた。

「マルザワーンを捕らえろ!!!!」


周囲にいた将軍達が直ぐさま敵を包囲する。

マルザワーンは呆気なく拘束された。



「兄上!!嫌だ!!しっかりして下さい!!兄上!!」

「ル………ザーン………」

ルームザーンが瀕死の兄の手を握る。

ファルーズは弟を見つめて微かに唇を動かした。


「やっ……に……い」


――やっと、兄らしいことがしてやれた。

守ってやれた。

カイサリアを頼む。

幸せになれ――



胸にある思いは瞳で語られた。

語り終えたファルーズは死への旅立ちと共に、ゆっくりとまぶたを閉じた。