砂漠の夜の幻想奇談


「行かなきゃ。そこに行って、兄上達を助けなきゃ…!」

今にも走り出しそうなサフィーアに、カシェルダが叫ぶ。

「お待ち下さい姫!奴の話を信用するのですか!?何の証拠もないのですよ!?」

「カシェルダ…でも…」

最もな意見に戸惑うサフィーア。

そんな彼女に魔神は優しく語りかける。

「うるさいお守り役の言葉など聞き流した方が賢明だ。姫、貴女が望めば俺が一瞬で砂漠まで連れて行って差し上げよう」

「え!?本当?」

「ああ。俺は約束を守る魔神だ。ただし、代償はいただくが…」

「代償…?」

サフィーアの表情が曇り、カシェルダがまた短剣に手をかける。


「姫の口づけ」


「え…!?」


「俺の頬に口づけてくれたら約束通りに運んで差し上げよう」