砂漠の夜の幻想奇談


「俺達はバグダードの兵士だよ。今、カイサリアは我々の軍に城を囲まれて籠城しているんだ」

「そんなっ!?」

外の情報を何も知らなかったのか、彼女は目を大きく見開いた。

「王子はっ…ルームザーン王子はご無事でしょうか…!?」

格子ごしにマリアムが身を乗り出す。

「ルームザーン?ああ、彼なら憎らしいくらいピンピンしてるんじゃないかな。俺のサフィーアを人質にとるくらい元気だよ」

皮肉をこめて言ってから、シャールカーンはまた一歩、格子に近づいた。

「俺はサフィーアをルームザーンから取り戻したいんだ。そのためには城内へ行かなきゃならない。君は城内へ通じる道を知っているかい?」

「………知りません。先程言った通り、私はここに閉じ込められています。目隠しをされ連れて来られたのです。自分が今、地下のどこにいるのかさえ、わかりません」