怒りをこめて睨んでやったら、最低男が一歩ずつ近寄ってきた。
「ルームザーンはお前で悲しみを紛らわそうとしたのか?ハッ、マリアムも可哀相に」
近づいてくるマルザワーンから距離をとろうと試みるも、狭い部屋なので失敗に終わる。
壁に追い詰められたサフィーアは、迫る吐息に対して露骨に顔を背けた。
耳に熱い息がかかる。
「また奴から奪ってやってもいいが、お前は大事な人質だ。何かしたら父上がうるさいから見逃してやろう」
(え…?どういう、意味…?)
背けていた顔を上げ、動揺した瞳でマルザワーンを見つめる。
(“また奪う”って……“奴”って……まさか、ルームザーン王子の、こと…?)
この男がマリアムの死に関係しているのだろうか。
詳しく聞き出したかったが、彼は謎だけを残して軟禁部屋から出ていった。



