砂漠の夜の幻想奇談


再び刃物を向けられ、ダハナシュの手が止まった。

「だから、俺は争いが嫌いなんだ。一度で理解してくれ」

そう言うとその魔神はカシェルダの剣を指で掴み、クネッと曲げてしまった。

「なっ!?」

驚くカシェルダを、鼻をフンと鳴らしながら満足げに見る。

その表情にムッときた護衛官。

ここで引き下がるのはプライドが許さない。

カシェルダは短剣に手をかけた。


「待って!やめてカシェルダ!彼に敵意はないわ」

「姫!しかし!」

「姫の言う通り。俺は姫を傷つけに来たわけでも、さらいに来たわけでもない」

するとダハナシュはサフィーアの足元にひざまずいた。

「美しきサフィーア姫。俺は貴女の美の奴隷だ。この憐れな奴隷の話をどうか聞いてはくれまいか?必ず貴女のお役に立つことを約束しよう」