砂漠の夜の幻想奇談


廊下から足音が。

しかも複数のようだ。

確実にこちらに近づいている。

「誰か来る…!ルームザーンではないなっ」

カシェルダが早口で独り言を吐き出し、サフィーアを背中に隠した瞬間。

勢いよく部屋のドアが開かれた。


「そなたがバグダードの王妃か?」

入ってきたのは数人の兵士。

それからマルザワーンともう一人。

サフィーアを目にして問い掛けた白髪の人物。

兵士のようにガッシリとした身体つきの初老の男性。


「動くなっ!」

カシェルダが刀を抜いて白髪の男性に切っ先を向ける。

刃を突き付けられた男性は嘲笑うように言った。

「貴様、カイサリア兵のくせに、王であるわしに刃を向けるか」


(王!?)


サフィーアが目を丸くする。

カシェルダも眉をピクリと反応させた。