砂漠の夜の幻想奇談



 さて、日暮れが近づいてきた頃。

ルームザーンと交替しつつ兵に指示を出していたマルザワーンは、ある兵士達の会話を小耳に挟んでしまった。


「お前、ファルーズ王子の軍にいたんだろ?よく生き残れたな」

「もう少しで全滅ってところをルームザーン王子に助けていただいたんだよ」

「へえー。そりゃ運がいい」

「だろ!王子は本当に頼りになるよな。どうやって助かったか教えてやろうか?聞いて驚け!バグダードの王妃を人質にとったんだぜ」

「マジか!そりゃあ、おったまげた!」


これを耳にして、マルザワーンは首を傾げた。

「バグダードの王妃を人質に…?」

そんな話はルームザーンから聞いていない。

兵士達の単なる噂話だろう。


と考えるも「待てよ」と思う。

そういえば、最近ルームザーンは部屋に食事を運んでいる。

本人は広間で食べているから不思議だなとは思っていたが……成る程。

本当に人質がいるのかも知れない。


マルザワーンはニヤリと笑い、王の部屋へ急いだ。