(確か…この声は…)
――アドニス、ラザロス、ネストル、レヴァン、コスティだ
昨夜、シャールカーンと出会う前に眠りに落ちた時、頭の中で響いたあの声にそっくりだ。
「貴方、もしかして…兄上達の名前を教えてくれた方…?」
「ほう…俺の声を覚えてくれていたとは、光栄の極み」
カシェルダの剣を恐れる様子もなく、男性がふわりとサフィーアに近寄った。
文字通り、ふわり。
彼の一歩は舞うようで、とても人間の歩行とは思えない。
「俺はダハナシュ。魔神だ。理解しづらければ悪魔だと思ってくれ」
「魔神…悪魔…。ま、まさか貴方が!貴方が兄上達を連れて行った魔神なの!?」
興奮した瞳で魔神を見つめるサフィーアと、彼女に触れようと手を伸ばすダハナシュの間にカシェルダが割って入った。
「姫!お逃げ下さい!」



