砂漠の夜の幻想奇談


「ハッ、自分が救われたくて必死か。サフィーア姫やお前の恋人の気持ちを考えたことがあるのか?」

「………っ!」

痛いところをつかれた。

自分のことばかりで、サフィーアの気持ちを無視したのは確か。

マリアムだって、こんな形で自分がまた誰かを愛することなど望まないだろう。

愛し愛された仲だから、わかる。


涙が溢れそうになり、ルームザーンは目を閉じた。


「…………すまなかった、サフィーア王妃」


クルリと背を向け、王子は言う。


「……頭を冷やしてくる。また…後で」


そして彼は一人、部屋から出て行った。



(王子……大丈夫かな?)


気になって、彼が出て行った部屋のドアをしばらく見つめていたサフィーアだったが、カシェルダに優しく頭を撫でられ視線を彼に向けた。

「本人の心の整理が終わるまで待ちましょう。大丈夫ですよ。言ってわからない奴ではないでしょうから」