砂漠の夜の幻想奇談


そしてサフィーアを隠すように、背に庇う。

「姫のことを本気で愛してもいない奴に姫は渡さない!!」


殴られた頬を手で押さえながら、ルームザーンは唖然としてカシェルダを見つめた。

そして、自分に愛を囁いてくれた恋人の笑顔を思い出す。



――王子、大好きです



そう――いくら似ているからといって、サフィーアはマリアムではない。

身代わりにしてサフィーアを愛したところで自分の心は渇いたまま。

誰かをマリアムの代わりにするなんてできないのだ。


「わかって、いたさ…」


気づいていたけれど、認めるのが苦しかった。

辛かった――。


「身代わりを手に入れたところで…私の心は、癒されない…」

けれど、失った恋人を思い続ける日々は繰り返される拷問のようで。