砂漠の夜の幻想奇談


タイミングを見計らって姫付き護衛官はテントの中に滑り込んだ。

そしてまず彼が目にしたのは、簡易ベッドにグッタリと横たわる自分の女主人だった。


(サフィーア姫…!なんてお労しい!)


急いで傍に寄り、手を握る。


(バグダードからここまで、あの男が無茶を強いたのか…!ルームザーンめ!)


ギリリと歯ぎしりをしていると、閉じていたサフィーアの目が開かれた。


「姫、大丈夫ですか!?」


(え…?あれ…?カシェ、ルダ…?)


「わかりますか?カシェルダです」


(嘘…!どうして、カシェルダがここに!?)


大きく目を見開いたサフィーアの顔を真っ直ぐ見つめ、カシェルダは早口で告げる。


「私一人で追いかけてきました。姫を見つけ次第、連れ帰ろうと思っておりましたが…もう日が暮れます。土地の人間ではないので、夜間の移動は危険です。明日までご辛抱下さい」