砂漠の夜の幻想奇談


ファリザードの父でもあるファルーズは、娘と同じ純粋な瞳をしていた。

「ルームザーン、ありがとう!本当に…!私だけでは兵士達を無駄死にさせてしまうところだった!感謝する…!」

「いえ…そんな。皆が助かって良かったです」

ルームザーンと抱擁をかわした後、ファルーズは横たわるサフィーアに目を向けた。

「この方がバグダードの王妃様か…?」

「はい。しかし兄上…!」

「わかっている。戦において、女性を利用したくはない」

ファルーズの言葉に少し安堵してから小声で尋ねる。

「父上には、言わないで頂けますか…?」

「もちろんだ。言ったら危険だろう。下手したら殺されてしまう」

そう言うと、ファルーズはルームザーンの肩に手を置いた。

「ここまで連れて来たからには、責任持ってお前が彼女を護りなさい」

「はいっ兄上」

力強い返事に、ファルーズは弟を頼もしげな眼差しで見つめた。