砂漠の夜の幻想奇談



 首都へと馬を走らすカイサリア軍とルームザーン。

休むことなく駆けるも、今日中には辿り着かないと判断し夜営をすることに。


「ハァ…ハァ…」


荒い呼吸を繰り返すサフィーアをルームザーンは慌てて馬から降ろし、水を与えた。

野営用のテントが準備されると、直ぐさまサフィーアを中に入れて横たわらせる。

「サフィーア王妃…すまなかった。貴女を人質にするつもりなんて、なかったのに……あの場ではあれしか思いつかず…」

彼はサフィーアの手を握り、誓うように額へ当てた。

「貴女を殺すことなんて私にはできない。私は貴女に……ただ、傍にいて欲しいだけなんだ…」

微かに震えている彼の声。

サフィーアはゆっくりとルームザーンに視線を合わせた。


(王、子……わかっ…てた。王子は…私を殺さないって。あんなの、ハッタリだって)