砂漠の夜の幻想奇談


「王、様…!」

まさかの言葉にムスタファ将軍の目が最大限に見開かれる。

「死に急ぐなよ、将軍」

ふわりと微笑むシャールカーン。

自軍の部下に、自分の命を大事にしろと言う。

だから彼は臣下に愛される。


「は、いっ…出過ぎた発言、申し訳ございませんでした…!!」

ムスタファ将軍が跪いた。


「謝るな。わかってくれたならいい。それより、今後について話し合いたい。急遽、軍議を開くから各部隊長達を集めてくれ」

「御意!」


命令を実行すべく下がったムスタファを見送り、ジェドラーンから降りる。


「ハァ……」

溜息がこぼれた。

心に思うのは愛しい妃のこと。


(サフィーア…。なぜ、ルームザーンと一緒にいたんだ…?王宮で一体何があった?あいつに、何もされてないか?)


気になることだらけで気が滅入りそうだ。

「王様!」

部下に呼ばれて振り返る。

激しい嫉妬心を抑え、シャールカーンは王の顔に戻った。