「なっ!将軍は王妃様を軽んじているんですか!」
傍で聞いていたトルカシュが腹を立てる。
ムスタファは溜息をついて否定した。
「そうではないが、人質になられた時点で王妃様にもお覚悟はあっただろう。王様のご迷惑になるくらいなら自ら死を――」
「ムスタファ将軍」
冷ややかな声だった。
シャールカーンが将軍を睨む。
「サフィーアは王妃である前に我が国の民だ。王である俺が、護るべき民の命を護って何が悪い?」
「………ですが…」
「なら問うが、俺が民を護らずして何を護るんだ?軍の勝利か?人の命と一瞬の栄光、お前はどちらがより貴いと思う?」
「………人の、命かと」
「なら、そういうことだ。良いな」
まだ納得いかない表情をする将軍に、シャールカーンは苦笑した。
「確かに俺は王妃が可愛い。だが、もしあそこでムスタファ将軍が人質に取られていたとしても、同じことをしただろう」



