砂漠の夜の幻想奇談


「退却の合図を送るべきか……形勢の逆転を狙うなら…」

ぶつぶつ言いながら必死に頭を働かせる。

しかし、敵将シャールカーンは待ってはくれない。


(あっ!カイサリアの左翼が!)


カンマカーンの軍が左翼を破った。

両脇がガラ空きになる。


「前衛は抑え込まれてる…。なら後衛で護りを固めるしか…!」

ルームザーンの考えは甘かった。

カイサリアの後衛はシャールカーンの中央軍に行く手を阻まれ、すでに蹴散らされていた。


圧倒的な軍事力と統率力の差。

呆気なく死地に立たされたカイサリア軍。

もう一刻の猶予も許されない。


ルームザーンの額から冷や汗が流れた。



――助けたい



「死んだら……終わりなんだ…」


父王に殺されたマリアム。

死んだ人間は、二度と戻らない。


「死んだら、終わりなんだ!!」


そして彼は、行動を起こした。