砂漠の夜の幻想奇談



 伝達用の鳥が知らせを寄越したのは、サフィーアの妊娠が発覚した二日後だった。


“ファリドの軍、全滅。至急戻られたし――”


カイサリア軍から密かに送られてきたこの文を読んで、ルームザーンは苦い表情をした。

ファリドはファリザードの兄だ。

「ファリドが、死んだか…」

可愛い甥っ子が亡くなってしまった。

全滅に追い込んだのはおそらく…。


「やるじゃないか…シャールカーン王」


敵将に小声で称賛を送った時。


「どうなさったのです?叔父上」

愛くるしい笑顔のファリザードがとことこと近寄ってきた。


「ファリザード……ショックだろうけど、教えておくよ」

「なんですの?」

彼女の純粋な瞳を見ていられなくて、ルームザーンは目を閉じた。


「ファリドが戦死した」