砂漠の夜の幻想奇談


サフィーアの髪をすくいあげ、唇を寄せる。

「うん。気が変わった。どうやって監禁しようか悩んでいたが、やめよう。夜明けにここを発つといい。帰してあげるよ」

「え!?本当!?本当なら嬉しいわ!」

今までで一番いい笑顔のサフィーアにシャールカーンも顔を綻ばせた。

「もちろん。俺は約束は守る男だよ」

「でも監禁まで考えてたなんて…。どうして気が変わったの?」

愛らしい双の瞳がシャールカーンを見つめる。

「人間が天女の衣を奪うように君の自由を奪ってもいいが…それだとありのままのサフィーアを見れないし、何より俺が君に恨まれるだろう?」

それはつまり綺麗なだけのお人形はいらないということ。

美を重視していた彼がこの短時間でえらく進歩した。

それだけサフィーア自身に興味を持ったということだろうか。