砂漠の夜の幻想奇談


筆を持ち、ラテン語を書く。

ルームザーンはラテン語の読み書きができるので話し掛けやすい。


(前に私と似てるって言ってたマリアムってどんな方?恋人?)


あの時、キスされそうになった。

それはつまり、そういう相手なのでは。

他人の恋愛話には興味をそそられるので尋ねてみる。

すると、文を読んでからルームザーンが苦笑した。


「ああ…。マリアムは…そう。恋人だったよ」


(恋人、だった…?)


過去形を気にしていると、王子は少し伏し目がちになり、続けた。


「今でも彼女のことが好きだけれど、マリアムはもう、どこにもいない。彼女は…死んだんだ」


ハッと息を呑んでから、サフィーアは己の無神経さを文字で謝罪した。

「謝らないでくれ。貴女がマリアムを殺したわけじゃないんだから」

力無く笑うルームザーン。