おどけた調子で話を締めくくったシャールカーンだったが、サフィーアは真剣な眼差しで振り返った。
「……兄上達は亡霊になどなっていないわ」
姫の強い眼光が王子の瞳を射抜く。
シャールカーンは高揚して身震いした。
「必ず生きてる。だから私が探しに行くのよ」
彼女の言葉には命が宿っているのではないか。
そう感じさせるくらい、サフィーアの放った言の葉は、気高い王子であり猛々しい戦士でもあるシャールカーンの強靭な心を揺さぶった。
「ハハッ…勇敢なお姫様だね。美しい君は男に守られていればいい存在なのに、俺の求婚を拒んで兄上を救うためわざわざ危険に飛び込む決意をするなんて…」
彼は笑った。
滑稽さや自嘲からではない。
「面白いな」
未知との遭遇による喜悦。
「君みたいな子は初めてだよ。サフィーア」



