年下の甥にハッキリ「迷惑」と言われてルームザーンは苦笑した。
「喧嘩を吹っかけた理由は、カイサリアがローマの属州だからさ。父上は王の座にいるけれど、国は東ローマ帝国の一部となっている。だから独立したいんだよ」
「巨大帝国からの独立、か…。勝算はあるのかい?」
聞いてみたら清々しい笑顔が返ってきた。
「ないね」
「はっ…?」
「勝算はないよ。無謀さ。だから私は反対したんだけど、父上は耳を貸す人じゃないからね」
勝てる見込みはないとアッサリ断言したルームザーン。
シャールカーンは正直、開いた口が塞がらない心境だ。
「父上は我が国を昔のカッパドキア王国に戻したいんだよ。まあ、気持ちはわかる。独立したいという思いは私も同じだ。だが、今は時期じゃない。西にはコンスタンチノープルを中心としたビザンツ、南にはバグダードを拠点に君が版図を広げる帝国がある。わかるだろう?巨大国家に挟まれた弱小国は、周りに尻尾を振らないと生き残れない」
ルームザーンは悔しげに唇を噛んだ。



