砂漠の夜の幻想奇談


「犯人は兵士だった、てところかな?」

ルームザーンが引き継いだ台詞に、シャールカーンが目を細める。

「やはり知っていたんだね」

「まあ、ね。そろそろかなとは思っていたよ。前々から父上が計画していたから」

カイサリアの王、ハルドビオスが計画していたこと。

それは――。


「私の父上はビザンツに喧嘩を売ったんだ。戦が起こり兵士が物資を略奪している。だから隊商は下手に動けないし、襲われたりもするわけだ」

やはり戦争か、と納得しシャールカーンは溜息をついた。

「命からがら、バグダードへ逃げて来た隊商もいるそうだ」

「それは幸運な連中だね」

クスッと笑う叔父の上品な笑みを見ながら、シャールカーンは苦い顔をした。

「で?なぜカイサリアがビザンツ帝国に喧嘩を売るような真似を?正直なところ、貿易に支障が出るから迷惑なんだが」