砂漠の夜の幻想奇談



 日陰になっていて割と涼しい部屋を選んだ。

廊下でカシェルダと歩いていたルームザーンを捕まえたシャールカーンは、青の色彩で統一された居間に彼を通した。

「話があってね」

カシェルダをサフィーアのもとへ戻らせ、二人きりで向き合う。

「何かな?」

ルームザーンは人好きのする笑みを浮かべた。

「ちょっと気になる話を耳にしたんだ。貴方も知っているとは思うが、この都は商業に力を入れている」

「ああ、そのようだね。今日、街を回って驚いたよ」

「あちこちから多くの隊商が集まって来るからな。インドやエジプト……もちろん、アナトリアからも」

シャールカーンは横目でチラッとルームザーンの表情をうかがった。


「……で?話とは?」

内心を読ませないポーカーフェイス。

ルームザーンがシャールカーンに続きを促す。


「アナトリアからの隊商が減った。道中、盗賊にでも襲われたのかと治安を調べさせてみたら…」