帰したくない。
キッパリ無理と言われても諦めがつかない。
そんなやり場のない思いを引きずりつつも、しつこい男だと呆れられないよう違う話題を口にする。
「君の兄上も行方がわからないのか?俺と同じだな」
「シャールもなの?私には十二人いたのだけれど、一人残らず魔神に連れて行かれてしまって…」
「魔神とは…。キリスト教徒にしては発想が素晴らしいな」
信じていない口ぶりにサフィーアはムッと口を尖らせた。
「本当よ!母上がおっしゃったんだもの」
「そうか。……にしても、十二人の王子ね。フッ、最近よく十二の数字と縁があるな」
シャールカーンは窓の外を指差し言った。
「知っているかい?このダマスのずっと東にある砂漠に、十二人の亡霊が出るという噂があるんだ」
「十二人の、亡霊…?」
「ああ。ちなみに俺は亡霊の代わりにそこで十二羽のガチョウを見た。まあ、亡霊の正体なんて意外とそんなものだったりする」



