砂漠の夜の幻想奇談



 さて、カシェルダとルームザーンが廊下を歩き出した頃、トルカシュの教えを受けたバルマキーはファリザードの泊まっている部屋の前まで訪れていた。


「…………よし」

ゴクリと唾を呑む。

彼は意を決して入室し、ファリザードに面会の許可をもらった。


侍女からバルマキーが来たと聞かされたファリザードは文字通り、飛び上がって喜んだ。

「バルマキー様!」

ウサギよろしくピョンと跳びはね、駆け寄ろうとしてハッとなる。

あまりに子供っぽい出迎えに、バルマキーは呆れるかもしれない。

ここは淑女らしく上品にいこうではないか。

コホンと一つ咳ばらいをしてからファリザードは姿勢を正した。


「何のご用でしょう?」


突進してくるかと身構えていたバルマキーは「あれ?」と拍子抜け。

一定の距離を保っているファリザード姫を呆気に取られて見つめる。