砂漠の夜の幻想奇談


「離れろ」

ドスの利いた声が響いた。

「カイサリアの王子と言えども、王妃に手を出したら容赦なく斬り捨てる」

ルームザーンの首に三日月刀が突き付けられる。

声の正体は護衛官のカシェルダだった。


「王、妃…?まさか、貴女がサフィーア王妃なのか…?」


我に返ったルームザーンがサフィーアから一歩離れた。

問われて頷く王妃を見て彼は頭を押さえた。

「そう、か…。初めて会った時はベールをしていたからわからなかったけれど……こんなに、似ているなんて…」


(似てる?マリアムという方のことかしら?)


「いや、本当にすまなかった。貴女が知り合いの女性にそっくりだったので、つい…。申し訳ない」


ここでやっとカシェルダは刀をおさめた。

「王子はここで何を?お泊りになられている居室があるのは向こうのはずですが」