「姫よ、どうした?怯える姿も愛らしいが、憂いは取り除いてやりたいからな。教えてくれ、我が美の主よ」
いつものニヤニヤ笑いを浮かべるダハナシュと目を合わせるも、サフィーアはすぐに視線をそらし、少し離れた位置に転がっている毒殺死体を見遣った。
「ん?あいつらが気になるのか?……いや、違うか。ふむ……成る程。姫の憂いがわかったぞ」
自分の中で納得すると、ダハナシュはアズィーザの死体を持ち上げた。
「この女、毒娘のようだからな。口づけられたことを気にしているのだろう?」
問えば涙目でダハナシュを見上げてくるサフィーア。
そんな姫の瞳にゾクゾクした快感を覚えながら、ダハナシュは言葉を続けた。
「だがな、それは杞憂だ」



