砂漠の夜の幻想奇談


体臭は有毒。

だから彼女の香りを嗅いだ周囲の人々は体調不良となったのだ。


「王妃様にも差し上げますわ。甘美なる死の口づけを…」


アズィーザにガッチリ身体を押さえ付けられる。

顔が固定され、逃げられない。


(い、いやぁあ!!)


抵抗しようと手足を暴れさせてみるも、遅かった。


「っ…!?」

アズィーザの唇がサフィーアのそれに重なり、口内に舌が差し込まれる。


(あっ、あ…あぁ…!)


ネットリと毒の唾液が染み込む。

アズィーザの舌を噛んでやろうかとも思ったが、実行したところでより毒に染まるだけ。


諦めた脳裏に過ぎるものは、今さっき目の前で息絶えた二人の宦官奴隷の死に顔。


(いやぁああっ!!死にたくない…!!)


サフィーアの目尻から涙が伝った、その時――。