「……貴方は狂わないわ、シャールカーン王子」
「シャールでいい。なぜそう思う?」
心底不思議だという顔をする美青年にサフィーアはクスッと笑った。
「だって貴方は口がお上手だもの。婆やが言ってたのよ。口が上手い殿方の愛情は移り気だって」
「それは嘘だな。まあ、本当だとしても俺には当てはまらないよ」
月明かりが彼の微笑を妖艶に照らし出す。
「父上は平等に愛をばらまいているが、俺は一人いればそれでいい」
言い終わると、シャールカーンはサフィーアの可憐な唇に今宵二度目のキスを落とした。
一度目よりも甘く、ねっとりとした熱い口づけ。
「んっ…!」
優しく攻められて、与えられる快感を享受させられる。
――俺は一人いればそれでいい
(その一人が…私…?)
あっさりと陥落してしまった唇を割って侵入してきた彼の舌に思考さえも絡め取られながら、なけなしの理性で先程聞いた言葉を反芻させる。



