砂漠の夜の幻想奇談


「そうですか…。良かった」

ホッとした表情のカシェルダ。


「あの、水でもお持ちしましょうか?」

気遣うようにアズィーザが尋ねてきた。


(うん。お願い)


サフィーアが頷くと、アズィーザが動く。

その時、ふわり――。

また、あの花のような香りが舞った。


「………おい、そこの侍女」

目を細めたカシェルダがアズィーザの後ろ姿を呼び止めた。

「何でしょうか」

「珍しい香りだな。……なんの香だ?」

「珍しいだなんて、とんでもございません。ただの薔薇の香にございます」


(薔薇…?)


サフィーアはちょっと考えた。


(確か、シャールも薔薇の香りよね。でもシャールとアズィーザの匂いは少し違う気がするのだけど…)


似ているが同じとは言えない感じがして首を捻る。

「薔薇、か…」

カシェルダも違和感を覚えたのか、疑う眼差しだ。


と、そこへシャールカーンがバタバタと慌ただしく駆け込んできた。