砂漠の夜の幻想奇談



 シャールカーンが行ってしまった後、サフィーアはいつもの通り編み物を始めていた。

「だいぶ糸が減りましたね。また羊の毛を刈った方がよろしいでしょう」

ドニヤに言われ、頷く。


(なら、後でシャールに羊の手配を頼まなきゃ)


その時、新人侍女アズィーザがサフィーアの前に座った。

「お手伝い致しましょう」

ふわりと、花が香るような芳しい匂い。


(わぁ~、アズィーザってとてもいい香り…!)


香りに気を取られていたら、不意にドニヤが声を上げた。

「アズィーザ!サフィーア様はお一人でなさるから大丈夫よ!それよりお飲みものをお出しして」

「はい」

立ち上がり、香りが離れていく。

そんなアズィーザを見つめていると、サフィーアの隣から呆れたような声がした。

「サフィーア様~!お忘れですか?お一人でなさらないと意味がございませんのでしょう?」


(あっ!そういえばそうね。危なかったわ。ありがとう、ドニヤ)


感謝しながらドニヤに笑みを送り、サフィーアは手元に集中し始めた。